神戸酒心館
(神戸市東灘区御影塚町)

 
 


念入りにデザインされた蔵の前景

建物の外見は酒蔵そのものでありながら、門をくぐると、正面が蔵と事務所、左手の平屋の建物は和風料理の店、右手の二階建ては、お酒の販売、利き酒、自家製の豆腐や酒の肴を含む食品販売、それに酒器の販売を中心とするショップ、そしてその奥が酒蔵の雰囲気をそのまま生かした多目的ホールという構成になっていて、デザインが実によく考え抜かれていると感じました。投資額もかなりなものになったのではありませんか。
 
そうですね。これだけの設備にするのに20数億円かかりましたが、幸いなことに高度化融資の震災特例が受けられましたので踏み切ったわけです。でもその返済がこれから始まります。
プランは震災前からありましたから、それをベースに淡交社や竹中工務店が意欲的に取り組んでくれて倒壊した建物の廃材とか庭石も活用することができ、良いものができました。

ただ、全体として日本酒需要の落ち込みが続いていますが、業績のほうはいかがですか。
 日本酒は、高価格イメージと高アルコール分のため随分苦戦していますね。デパートのギフト需要も随分落ち込んでいます。幸い当社の場合、敷地内でのレストラン、物販、それにイベントの収入も好調ですし、消費者を組織化した会員制の「酒心館クラブ」がほぼ1万人になってこのルートの販売も順調に伸びていますので、昨年は売上高ベースで18%の伸びがありました。

それは素晴らしい。文化酒蔵としての価値が総合力を発揮してきているようですね。流通面でも会員組織を持っておられるようですが。
 はい。主として京阪神と首都圏の酒販専門店を対象に「酒心館の会」があります。商品管理に万全を期すため会員は温度管理ができることも重要な条件になっていますから、お客様に対してよい品質のお酒をお届けできるようになり、それが信頼にもつながっているように思います

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 あの大震災から6年が過ぎた。テレビ画面を通じて知った被害の状況は、今でも鮮明に思い出される。日本酒の主産地灘五郷の酒蔵も大きな打撃を蒙リ、廃業する企業も出たことは記憶に新しい。
 その中にあって、震災を契機に社名を変え、新たな意気込みで一層文化活動に力を入れて地域活性化に貢献し、経営上も成功を収めている蔵が「神戸酒心館」である。同社の元気な秘密を探り、またメセナ大賞地域賞を受賞するほどの文化活動の実情をこの目で確認するために、底冷えのする2月のある日、新幹線・新神戸駅から海寄りに車で20分の地にある同社を訪れた。応対してくださったのは、安福重照社長と安福幸雄専務のご兄弟である。


 
 安福重照社長(右)と同幸雄専務

まずは大きな賞、おめでとうございます。

 ありがとうございます。とにかく当社以外の受賞企業はいずれも巨大企業ばかりですからね。名誉なことだと思っております。
活動の規模は別として、私たちの長年にわたる地道な活動が評価されたことは嬉しいことですし、また社員全体の大きな励みにもなりました。

震災後、社名を変更されました。伝統を重んじる酒蔵として、社名を変えるのは勇気の要ることだと思いますが。
 おっしゃるとおりです。でも当社は、戦災でも焼失し、その時に銘柄を「福寿」に、また62年には社名を「福寿酒造」に変えた経験があります。だからというわけではありませんが、また戦災同様の試練を受けたのを機に思い切ってもう一度変える決心をしました。