日本酒ライスパワー・ネットワークの会員企業の多くが、共通の技術に基づいて作っているのが「あ、不思議なお酒」という日本酒。何が「不思議」かといえば、とにかく飲みなれている他の日本酒の味・香りとは全然違うところ。まろやかな甘さと酸味が調和して、ワインのような香りがあり、とても飲みやすいお酒です。 伝統的な酒造りに固執しがちな日本酒業界に一石を投じたお酒は、アルコール度数が8%台ときわめて低く(普通の日本酒は15〜16%)、その上、原料は米、米麹、水だけ、という「純米酒」造りなので、お酒に余り強くない若い女性にも大変好評です。
1980年代、数度の欧州旅行へ参加した一ノ蔵の鈴木和郎副社長(当時)。パリのビストロ(居酒屋)でのヘビーで酸味の強い独特の風味のベルギー産のランビック・ビールとの出会い、そしてウイーン郊外で生ワインを取っ手の付いた小型のジョッキでビールのように提供しているホイリゲ(ワイン居酒屋)での体験は、ビールとワインの垣根はないとカルチャーショックを受けて帰国しました。同じ醸造酒でありながら、同質化・均一化した日本酒の品質に疑問を持ち、日本酒の風味の多様化に挑戦できないかを勇心酒造の農学博士徳山孝社長に相談したのです。 当時は、アルコール度数が低くておいしい日本酒をつくるのは困難、というのが業界の常識でした。この常識を破る醸造法の基本技術を徳山博士は考案し、「あ、不思議なお酒」が生まれたのです。 鈴木社長は、「1社で取り組んでも業界の改革はできない」と考え、勇心酒造、嘉美心酒造、富久錦の三社と共同で、新しい技術に基づく低アルコール酒の生産に取り組むことを呼びかけました。こうして1984年、「日本酒ライスパワー・ネットワーク」の前身である「コンポ・バムバム」が誕生し、次第に賛同者を増やしてきたのです。
「コンポ・バムバム」は単なる仲良しグループではなく、「清酒需要の急降下からの脱出」を目指し、「酒類以外の醸造・発酵食品、地方特産物などとの幅広い連携」を視野に入れた「純粋低アルコール酒の開発グループ」として出発しました。 したがって、低アルコール酒を市場に問うことの重要性を認識し、徳山博士の「ライスパワー」の基本理念に共鳴する会員が、共通の基本技術・ノウハウに対し特許料を支払って商品開発・生産に取り組んで来ました。1999年に「日本酒ライスパワー・ネットワーク」に改組した後も、この考え方は変わっていません。なお、勇心酒造のもつこの「低アルコール酒製造特許」の利用は、会員に限定されています。 もちろん、共通の基本技術に依拠していても、各社の使用する原料や造りの特徴によって、それぞれの商品には独特の個性があります。「業界革新では力を合わせつつ、個々の商品では切磋琢磨する」という、「協調と競争」の原理が働いています。
「あ、不思議なお酒」の技術をベースとして、日本酒では初めてといってよい「発泡性タイプ」の低アルコール日本酒が登場しました。開発したのは、このグループのリーダーである(株)一ノ蔵。1998(平成10)年秋の発売以来、大きな反響をよび、通常タイプの低アルコール純米酒を上回る急成長を続けています。 このお酒は、低アルコール酒の発酵工程を早めに止めてびん詰めし、残っている糖分をびん内で再発酵させることにより、炭酸ガスを生成させるものです。びんの中で発酵させるため、製品の一本一本の管理が必要で、大量生産向きではありません。出荷後も、0℃から5℃の低温を維持し、光や振動を避けるなど細心の品質管理を必要とします。通常の「にごり酒」よりも薄い乳白色をしていて、開栓すると溶けていた炭酸ガスが細かい泡となって立ちのぼり、まるでシャンパンのようです。アルコール度数は4.5〜5.5%(一ノ蔵の製品の場合)と通常タイプの低アルコール酒よりもさらに低く、発泡による独特の爽快感とともに、飲みやすさと楽しさを演出する基となっています。 なお、この『びん内発酵技術』(製法と成分)については、活黹m蔵が特許を出願中です。